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宇都宮地方裁判所 昭和40年(行ウ)3号 判決

原告 有限会社日光閣

被告 鹿沼税務署長

訴訟代理人 筧康生 外六名

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一、当事者の求める裁判

一、原告

被告が原告に対してなした別紙目録記載の決定を取消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

との判決

二、被告

主文同旨の判決

第二、当事者の主張

一、原告の主張

1  原告は肩書地(中禅寺)において温泉旅館営業をなしている有限会社であるが、所轄鹿沼税務署長に対し昭和三二年四月一日より翌三三年三月三一日までの事業年度の法人税の確定申告を次のとおりなした。

所得金額 金七九万六、二〇〇円

留保金額 金三六万一、七〇〇円

法人税額 金三一万四、〇四〇円

2  しかるに被告は、昭和三四年一一月三〇日別紙目録記載の更正決定をなし、同年一二月三日到達の書面でその旨原告に通知した。そこで原告はこれを不服として昭和三五年一月四日被告に対して再調査請求をなしたが、被告は同年三月二九日右再調査請求を棄却した。よつて原告は同年五月二日関東信越国税局長に対して審査請求をなしたところ、同局長は昭和四〇年一月三〇日右審査請求を棄却する旨の決定をなし、右決定書は同年二月五日原告に到達した。

3  しかしながら被告の前記更正決定は、次の理由により違法であるから取消されるべきである。

(一) 違法性

被告が原告の確定申告に対する更正決定をなしたのは、原告が右確定申告において訴外奥日光開発株式会社(以下奥日光開発と称することもある。)に対して同年度中に支払つた特別温泉使用料金二〇万円を経費としてその全額を損金に計上処理したのに対して、被告はこれを無形固定資産に対する改良的支出であるとして経費として認めず、減価償却の方法によりその半額一〇万円しか損金と認めなかつたことに基づくものである。

しかしながら右特別温泉使用料は、左のとおり温泉湯購入に対する普通温泉使用料の割増料金たる性質を有するものであるから、経費として処理すべきものである。

(二) 特別温泉使用料の発生過程

(1)  奥日光開発は昭和二四年中禅寺の旅館業者らを発起人として設立されたもので、日光湯元の源泉より温泉湯を採取する権利(以下第一次温泉権と称する。)を有し、原告をはじめ中禅寺地区の各旅館に対し継続的な温泉供給契約を結んで料金を徴して温泉を引湯供していた。(原告のこの温泉湯の供給を受ける権利を第二次温泉権と称する。)

(2)  ところが右配湯を受ける温泉は原告所在地の中禅寺から遠く隔たつた日光湯元の泉源から引湯しているため途中冷却して約二六度程度の低温となる関係から原告をはじめ中禅寺の各旅館は各自右温泉湯を加熱して使用していたところ、昭和三一年東武鉄道株式会社(以下東武鉄道と称する。)が奥日光開発の株式を買収してその経営を全面的に引き継ぐことになつた際、同年五月三〇日右両会社の間に次のごとき条項の契約がなされた。

(イ) 「東武鉄道は奥日光開発をして試掘温泉源(昭和二九年一〇月試掘のもの)又は将来新に開発する温泉源に完全なる引湯設備を施し、湯元温泉、中禅寺温泉および沿線の各需要者に温泉湯を供給せしめる。」

(ロ) 「奥日光開発が需要者に供給する温泉湯の最低温度は、浴槽湯口において摂氏四二度とする。」

(ハ) 「中禅寺温泉利用組合員は奥日光開発に対して普通温泉使用料のほか、特別温泉使用料として年額金四〇〇万円を一〇年間支払うものとし、期間経過後はその時協議する。」

(3)  更に奥日光開発は、右同日原告がその組合員である中禅寺温泉利用組合(民法上の組合、以下中禅寺組合ともいう。)との間に次のごとき条項の契約をなした。

(イ) 「中禅寺組合は、奥日光開発の定める普通温泉使用料のほかに特別温泉使用料を支払う。」

(ロ) 「特別温泉使用料は年額金四〇〇万円とし、これを一〇年間月別に分割し毎月一〇日中禅寺組合の代表者が、奥日光開発の指定する場所に持参して支払う。」

(ハ) 中禅寺温泉組合員は、中禅寺温泉地区内(丸山および菖蒲ケ浜を含む)の温泉を利用する者に限る。」

(ニ) 「奥日光開発は温泉利用申請者が、中禅寺組合に加入しかつ普通温泉使用料ならびに特別温泉使用料の支払承諾を確認した場合に限り温泉の供給を開始する。」

(ホ) 「奥日光開発は需要者が特別温泉使用料の支払を滞つた場合は、直ちにその需要者に対する温泉供給を停止することがある。」

(ヘ) 「需要者が支払を滞ることにより生ずる特別温泉使用料の不足額は、残余の組合員において連帯支払の責を負う。」

(4)  原告は右契約により前記事業年度より奥日光開発に対して特別温泉使用料を支払うことになつたが、原告をはじめ中禅寺組合員が普通温泉使用料のほかに特別温泉使用料を支払うことに同意したのは、前述のごとく従前は奥日光開発より供給を受ける温泉湯が低温であつたため中禅寺地区の各旅館は年間総額約金四〇〇万円に上る費用をもつてこれを加熱して使用していたところ、昭和三一年東武鉄道が資金を出し引湯施設を改良し浴槽湯口において摂氏四二度の温度を保障することに伴い、各旅館はそれにより不要となつた加熱費用相当額年額金四〇〇万円を一〇年間各組合員の温泉使用量に応じて各組合員において分担して奥日光開発に支払うことになつたのである。

(三) 特別温泉使用料の性格

(1)  前記泉源に対する第一次温泉権は奥日光開発が有しているものであつて原告が有している第二次温泉権は物権的利用権ではなく単に奥日光開発から温泉湯を購入供給を受け債権的利用権であるから原告は右温泉権に関しては何ら資産を所有しておらず、また引湯設備も奥日光開発が施設しかつ所有しているものであつて、原告はこれに対しても何らの権利も有していないのである。

(2)  更に前記契約から明らかなように原告をはじめとする中禅寺組合員が支払う特別温泉使用料は、当初から一〇年間年額金四〇〇万円と限定されていたわけでなく、一〇年後は再びこれを協議する定めとなつていた。

以上の点からすれば特別温泉使用料は、温泉湯の浴槽湯口での温度を摂氏四二度に保障するための奥日光開発の投資に対しその採算上、普通温泉使用料のほかにこれに付加して支払うことになつたものであり、その性格は普通温泉使用料の割増料金であるにすぎない。

(四) よつて右特別温泉使用料を普通温泉使用料と同様その全額金二〇万円を経費として損金に算入処理したことを否認した本件更正決定は違法である。

二、被告の答弁および主張

1(一)  原告の主張1、2は認める。

(二)  同3(一)のうち特別温泉使用料は割増料金であり経費として処理すべきものであるとの主張は争い、その余は認める。

(三)  同3(二)(1) は認める。

(四)  同3(二)(2) のうち契約の中に(ハ)の部分があることは否認し、その余は認める。右部分の合意は次のとおりである。

「奥日光開発は中禅寺温泉組合員との間に、普通温泉使用料のほかに特別温泉使用料として総額金四、〇〇〇万円を年額金四〇〇万円の一〇か年年賦として奥日光開発に支払うことを契約し(右特別温泉使用料を)東武鉄道に提出するものとする。」

(五)  同3(二)(3) のうち契約の中に(ロ)の部分のあることは否認し、その余は認める。右部分の合意は次のとおりである。

「中禅寺組合の負担する特別温泉使用料の総額は金四、〇〇〇万円とし、年額金四〇〇万円を月別に分割し毎月一〇日に組合代表者は、奥日光開発の指定する場所に持参支払う。」

(六)  同3(二)(4) は認める。

(七)  同3(二)(5) は争う。

2  本件更正決定の適法性

(一) 特別温泉使用料の概要

(1)  原告を含む中禅寺地区および湯元地区の温泉旅館業者らは、昭和二四年一一月一〇日、奥日光開発を設立し、同会社が日光市湯元の泉源に保有する第一次温泉権の利用について、同会社との間で、石当り金六円五〇銭程度で継続的に温泉の供給を受ける契約を締結し、以来原告らはこれにより右温泉の利用権(第二次温泉権)を取得した。

しかし中禅寺の各利用者らは、右供給湯が中禅寺からほぼ一二キロメートルも離れた湯元の泉源からの引湯であるうえにその間の引湯設備も不完全であつたため各利用者の浴槽湯口での温度は摂氏二六度程度にすぎなかつた。このため中禅寺地区の温泉利用業者らは、これを各自加熱して利用しなければならない不便を甘受していたものである。

(2)  その後奥日光開発は経営の行きづまり等から、その経営を東武鉄道にゆだねるとともに昭和三一年五月三〇日付をもつて同会社との間に当時の栃木県知事および日光市長を立会人とする次のような契約を締結した。

(イ) 東武鉄道は奥日光開発をして同会社が中禅寺地区等の需要者に供給する温泉につき、完全なる引湯設備を施させてその最低温度を浴槽口において摂氏四二度とする。

(ロ) 奥日光開発は、中禅寺組合から、普通温泉使用料のほか特別温泉使用料として総額金四、〇〇〇万円を年額金四〇〇万円の一〇年年賦として徴収する。

そこでこの契約を受けて奥日光開発は中禅寺組合との間で原告主張(二)(3) (イ)ないし(ヘ)のような内容の契約を締結した。右契約によれば、奥日光開発は中禅寺組合の組合員に限り温泉を供給する約定となつている。

(3)  したがつて原告を含む中禅寺地区の温泉旅館業者らは、奥日光開発に対し普通温泉使用料のほか総額金四、〇〇〇万円を特別温泉使用料という名目で一〇か年間均等賦払することによつて、従来引湯設備が不完全であつたため浴槽湯口において摂氏二六度の温泉しか利用できなかつた第二次温泉権が、一躍一六度も高温な四二度という加熱不要の温泉を利用する権利に改良されることになつた。

またこれに関連して普通温泉使用料金も従来石当り金六円五〇銭程度であつたものが昭和三二年四月から一挙に石当り金二五円とされ、その後昭和三六年一二月からは金二三円、昭和三八年一月からは金二〇円となつている。

(4)  中禅寺組合は、昭和三二年四月八日の総会において前記特別温泉使用料に対する各組合員の負担額を定めた結果原告は年額金二〇万円を負担することとなつたので、まず本件係争事業年度において年賦額二〇万円を支払つたものである。

(二) 本件更正処分の根拠

(1)  以上のとおり原告が支払つた金二〇万円の特別温泉使用料は、従来浴槽湯口において摂氏二六度の温泉しか供給されなかつた第二次温泉権の内容が摂氏四二度の温泉を供給されるものに改良されるための投資であつて、資産改良のための資本的支出であるので、これを全額損金に計上した原告の処理は誤りであつて、減価償却費金一〇万円のみを損金として計上した上更正したものである。

(2)  次に原告の取得した第二次温泉権を無形固定資産として減価償却費を損金と認めたのは次のような理由によるものである。

イ 本件係争年度当時の法人税法(昭和二二年法律第二八号。以下旧法という。)、同施行規則(同年勅令第一一一号。以下同施行規則という。)によれば、鉱業権、漁業権、水利権等の無形固定資産については減価償却額の損金算入が認められているが(旧法九条の八、旧施行規則二一条)、第二次温泉権についてはこれを認める明文はない。しかしながら第二次温泉権も無形固定資産であつて、しかもその基因となる温泉は自然現象として湧出量の増減が考えられるので、国税庁ではそれらの影響による泉源の消耗を考慮し、水利権と同様の減価償却費の損金計上を認めることとし、昭和二五、九、二五直法一-一〇〇の国税庁長官通達二二八の三(昭和二六年直法一-一三〇追加)によつて、水利権に準じて減価償却費の損金算入を認める取扱いとしたものである。

そこでこれに基づいて被告が本件更正決定に用いた算式は次のとおりである。

水利権に準ずる本件第二次温泉権の耐用年数を20年、第二次温泉権の価格を金200万円とする。

2,000,000×1/耐用年数20 = 100,000円(当期損金算入の減耗費)

200,000円〔原告損金計上額〕-100,000円〔当期損金算入の減耗費〕= 100,000円〔否認額〕

ロ なお現行法人税法(昭和四〇年法律第三四号、第二条第二三号)更に同法施行令第一二条、第一三条によれば、減価償却資産として、無形固定資産の中に水利権を掲げているが、第二次温泉権は右水利権に準ずるものであるから、前記施行令第一二条第四号の「前三号に掲げる資産に準ずるもの」として固定資産の範囲に含まれるということができるのである。

よつて本件更正決定は適法である。

第三、〈証拠関係省略〉

理由

一、原告の主張1、2は当事者に争いがない。

二、よつて原告が奥日光開発に対して支払つた本件特別温泉使用料金二〇万円を、法人税の所得計算上経費として処理すべきものかあるいは資産改良のための資本的支出として処理すべきものかについて判断する。

1  原告が特別温泉使用料を支払うに至るまでの経緯

原告をはじめ中禅寺地区の各旅館は、昭和二四年以来、日光市湯元所在の泉源から温泉を採取処分し得るいわゆる第一次温泉権を有する奥日光開発との間に温泉供給契約を締結して同会社から温泉の配湯を受けて温泉旅館として営業していたのであるが、右配湯は遠く湯元から引湯していた関係上送湯の過程で温度が低下し、原告や各旅館は右温泉を各自加熱して使用せざるを得なかつたところ、昭和三一年東武鉄道が奥日光開発の経営を引き受けることとなつた際、奥日光開発は東武鉄道の資金により中禅寺地区への送湯設備を改善し、同地区内の受給者に配湯する温泉の最低温度を各受給者の浴槽湯口において摂氏四二度とすることを約したのに伴い、原告をはじめとする同地区の各受給者らは、従前から支払つている普通温泉使用料のほかに、右設備改善により支出を免れる温泉加熱費の年間総額に見合う合計金四〇〇万円を特別温泉使用料として支払うことになつたことは当事者間に争いがない。

そして〈証拠省略〉によれば、次の事実が認められる。

奥日光開発は昭和二四年ごろ主として中禅寺地区の旅館業者らが発起人となつて、湯元所在の泉源に対する第一次温泉権の取得と、同所から約一二キロメートル隔たる中禅寺地区への引湯を目的として設立されたもので、以来同会社は右泉源により同地区の旅館に温泉湯を供給するなどの事業を営んできたが、送湯設備の不完全から経営が行詰つたので、昭和三一年その株式を買収した東武鉄道に経営を委ね、同会社の援助のもとに経営の建直しと送湯設備の改善を実施したこと、東武鉄道が奥日光開発の経営を引き受けるにあたつて昭和三一年五月三〇日奥日光開発に対し、同会社が中禅寺地区の温泉利用者に供給する温泉は各浴槽湯口において最低摂氏四二度以上とすることを保障するとともに、奥日光開発は、東武鉄道に対し、中禅寺地区の温泉利用者らが前記送湯設備の改善計画に協力する目的で設立した中禅寺温泉利用組合(民法上の組合)所属の組合員との間に契約を結んで右組合員をして普通温泉使用料以外の特別温泉使用料として総額金四、〇〇〇万円を一年金四〇〇万円の一〇年年賦の方法により奥日光開発に支払わせる旨約定し、同会社はこれに基づき同日前記組合との間に、同組合においては奥日光開発に対する前記特別温泉使用料の支払につき各組合員らからの取立および支払の責に任ずることを約する一方、奥日光開発においては右組合員であつて前記特別温泉使用料の支払を承諾した者でなければ右温泉を供給しないことを同組合に約したこと、そこで同組合はそのころ総会を開いて原告を含む各所属組合員に対する前記使用料金の割当額を定め、原告はこれに基づいて、四二度以上の温泉が供給されるようになつた昭和三二年四月から年賦金の初年度分の割当額である前記金二〇万円を同組合を通じて奥日光開発に支払つたこと、がそれぞれ認められる。

〈証拠省略〉中右認定に反する部分は採用せず、また前記乙第二号証と同じく前認定の東武鉄道、奥日光開発間の契約に関する証書である甲第一号証中に、その第四項として、前記一〇年間の期間経過後の特別温泉使用料については当事者が協議して定める旨の記載があることは、前記使用料の総額が右契約当初から金四、〇〇〇万円として確定していたとの前示認定にそわないものであるけれども、右甲号証の原本はその作成の経緯が明らかでないばかりでなく、その記載内容を前記乙第二号証の内容と対比すると、後者がより詳密であるから、これをもつて前示契約に関する最終的合意内容を記載したものと見るべきである。

そこで以上認定の各事実に、前記各契約とも、奥日光開発が中禅寺温泉利用組合員らに温泉湯を供給する期間については特段約定がなかつた点を考え合わせると、原告の有する第二次温泉権は前示各契約に基づく東武鉄道および奥日光開発に対する継続的温泉利用権であつて、しかも右権利は右各会社に対しては中禅寺温泉利用組合の組合員のみが独占し得る利用権であることは明白であつて、このような権利に基づく右組合員らの温泉利用関係を単なる温泉湯の売買の観念をもつて律し得ないことは多く説くまでもないところである。

そうだとすれば、原告の第二次温泉権は、それが物権的権利であるか債権的権利であるかを問わず、原告の営む温泉旅館営業に不可欠のものとして長期にわたつてその事業の用に供される、会計学上の無形固定資産に属するものと解するのが相当である。

2  特別温泉使用料支出の性質

(一)  原告やその他の中禅寺組合員が特別温泉使用料のほかに普通温泉使用料を支払つていることは当事者間に争いがなく、〈証拠省略〉によれば、その額は前記契約により温泉湯の最低温度が摂氏四二度となつた時から、一石当り金六円五〇銭より一挙に金二五円に値上げされ、その後値下げされたが、なお石当り金二〇円を下らない額を徴していることが認められる。したがつてかかる大幅な値上げは、供給される温泉湯の温度が上昇したことによるものであつて、右値上後の普通温泉使用料は温度上昇に対する対価額を含む額であると見るべきである。

(二)  そこで前記認定の各事実によれば、原告の有する前認定の無形固定資産たる第二次温泉権は原告ら中禅寺温泉利用組合員らが前認定の特別温泉使用料金総額金四、〇〇〇万円を支払うことにより、初めて従前の加熱を要する低温の温泉湯に代えてこれを要しない高温の温泉湯の供給を受け得る内容に改良されたものであるから、そのために原告が支出した前記特別温泉使用料は、前認定の無形固定資産たる第二次温泉権の改良のための資本的支出というべきである。

したがつて特別温泉使用料を普通温泉使用料と同様の経費としてその全額を損金に算入すべきものとする原告の主張は、理由がない。

三、また被告が本件更正決定において第二次温泉権が無形固定資産であることを前提に、無形減価償却資産である水利権に準じて、原告が一〇年間に支払うべき特別温泉使用料の総額金二〇〇万円を原価としてその主張の償却率により金一〇万円を前記昭和三二年度の減価償却費として認めこれのみを損金に算入したことも相当として、これを是認することができる。

してみれば原告が本訴において取消しを求める本件更正決定には、何らの違法はなく原告の請求は理由がない。よつて原告の請求を棄却することとし訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 須藤貢 田辺康次 川崎和夫)

目録

一、所得金額   金八九万六、二〇〇円

一、留保所得金額 金四二万〇、六〇〇円

一、法人税額   金三五万四、九三〇円

以上

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